蜘蛛の糸

 小さいころ蜘蛛の糸という話を読んで以来、蜘蛛は見かけても殺さずに外に出すことにしている。今まで自分がしてきた行いを考えると地獄に落ちることは間違いないのだが、無駄な殺生はしたくないし壁や床を汚すのもいやなので、まあ気休めみたいなものだ。

 そのせいかはわからないが、我が家には常に蜘蛛が1匹はいる。不思議なことに、外に追い出したと思っても2,3日もすれば壁を這っているのを見かけるようになるのだ。今の部屋には2年近く住んでいるが、蜘蛛がいなかった日は合計で1ヶ月もなかったと思う。

 その恩恵なのか、我が家はアパートの1階にありながら未だかつてゴキブリが1回も出たことがない。目の前は植木だから、これは結構すごいことだと思っている。蜘蛛がゴキブリの天敵と言う話は聞いたことがないが、元々害虫を食べる昆虫なのでさりげなく助けてくれているのだと勝手に解釈している。

 蜘蛛の糸というのは死後の世界でなくても通用するお話なのかもしれない。