バランスが取れていないもの

 倒産するベンチャー企業をこれまでいくつか見てきたが、往々にして「ダメな人」がいない企業が多い。優秀な人材ばかりを採用し、環境を整え、経営陣も一流大学を出た人ばかり・・・そんなオールスターを揃えた企業ほどダメになることが多い。

 理由はバランスが取れていないことだと思う。優秀な広告マンばかりを集めても素晴らしい広告ができないように、仕事のできる人ばかりを集めても企業はうまく回らない。一時的には急成長をするがどこかでつまづいて一気に衰退していくのを見ると、何事もバランスが大事なのだということを痛感する。

 一流と呼ばれる企業ではこれを知ってか知らずか、出来が悪いが愛されるキャラの社員がだいたい部署ごとに一人はいる。その人は仕事はできないが、部署全体の雰囲気を良くする潤滑油のような役割を果たす。ミスをしても「○○さん、ダメだよこんなことしちゃ〜」といった感じで許される。

 そんなキャラクターの人がいる会社は、強い。そしてそのような人材は巷にゴロゴロ転がっている仕事ができる優秀な人材より少なく、採用は困難を極める。優秀ではないけれど、社内の誰もが知っている社員になる可能性を秘めた人材は希少価値が高い。

 「なんであんな会社がずっとウチより上にいられるんだ?」と不思議に思うことがあったら、自分の会社のメンバーに偏りがないかを調べてみるといい。文系、理系、体育系、仕事ができる人、できない人、マジメな人、不真面目な人・・・どれかに偏っていれば、意図的に違うキャラクターをもつ人材を採用していくことをおすすめする。

 優秀な人だけが社会を形作っているわけではない。